すべてオフセットのトラ大統領

トラ大統領の就任演説を高校受験生の孫の英語教材にしているので、結構端から端まで読みましたが、なんといっても特に難しい表現や語法も少なくおそらく米国人であれば小学性レベルの教材としても使用できるほど解りやすい内容であったと思います。そういう意味でもトラ大統領は今までにない前代未聞の大統領ではないかと思います。

前代未聞といえば、みんなが当然と思っている価値を一旦オフセット(相殺)したのがトラ大統領の登場ではないでしょうか。つまり自由とか平等や人種とかLGBTなどは2016年11月29日以降はそんなものはPC(political correctness)として排除するというか、一旦横においておくのがトラ流であってそんなもんよりもっと大事なものを忘れてるやろ、というのがその主張の要点であって、その要点こそがヒラリーを打ち破って米国民の支持を勝ち取った重要なメッセージでありました。

オバマ前大統領は、就任するとチェコのプラハで「核なき世界」(the world without nuclea power)を訴え、やがてノーベル平和賞を受賞しました。しかし「核なき世界」は現実のものとして、みんなの目の前に姿をあらわすどころかイランとの核合意や北朝鮮の暴走、もっといえばシリアへの対応のまずさに伴うISの台頭、ロシアとの冷たい関係、ヨーロッパや中東さらには東アジアにおいてもほとんどあえていえばきれい事で終わってしまい確かに演説には格調があって人を感動させはしましたが結局は何も出来なかった優等生でした。勿論我が国にとっても対中国、北方領土問題を含む対ロシアにおいて関西弁でいえば屁のつっぱりにもならないとは言い過ぎですが、毒にも薬にもならない人でした。

しかしトラ大統領の言動は、何の遠慮もなく言いたいことを言いその言い方には格調もありませんが、毒になるのか薬になるのかはまだ分かりませんが、途方も無いパラダイムの転換を感じさせます。それでは順番にその主張の中味を見てゆくことにいたしましょう。

重要なキーワードとしてはまず、「ワシントン政治からの決別」があります。これも歴代の大統領なら決して言わないフレーズでしょう。つまり、

Washington flourished - but the people did not share in its wealth.
(省略)
The establishment protected itself, but not the citizens of our country.

政治屋さんは自分を守るは上手だけども、米国民を守らなかった、その結果米国民は仕事を失い、工場は閉鎖されたがワシントンだけは繁栄したと言いたげですし実際あとできっちり言っています。

そしてAmerica firstとして(最近ではアスリートファーストだとか都民ファーストだとか寝ぼけた事を言ってる人が目障りですが)国益の最優先はさらにもっと解りやすく、決して自由で公正な企業形態を否定しているのではなく、攻撃しているのは国益を損なうような無国籍企業であり、得た利益をタックス・ヘイブン等に隠してまともに税金を払わない大企業であって、もっと言えば途上国に工場を作り低賃金で人をこき使い出来上がった製品を先進国で高く売り抜け、なんだかんだと訳の分からない複雑な企業形態をとって米国に相応の税金を払わない会社はダメだ、と言っているのです。

さらにboaderやprotectという言葉を頻発させ、今大事なものはPCではなく普通の人の雇用がしっかり守られていて、不法に入国した悪者や変な宗教で頭がおかしい人たちに世の中を脅かせれることがないように、オレが責任をもって米国をもう一度素晴らしい国にします、と言っているだけなのです。実に解りやすいですね。

次に「文明の側に立つことを恐れない」明確な意思表示があります。
We will reinforce old alliances and form new ones - and unite the civilized world against Radical Islamic Terrorism, which we will eradicate completely from the face of the Earth.

イの一番にやることはイスラム原理主義をこの世から完全に根絶させ、NATO等の古い同盟を強化し新しいものを文明の側からつくり上げると言っていますね。つまり場合によってはイスラム原理主義を葬り去るためには、ロシアばかりでなく中国とも組むこともありうる事を示唆しています。
これなどは以前の政権なら発狂しそうな宣言とも取れないことはありません。

また「多様性の政治から共通性の政治」を目指している事も見て取れます。トラ大統領は聖書を持ちだしてまで、
The Bible tells us, "how good and pleasant it is when God's people live together in unity."
何度も連携の大事さを強調しています。それは、あたかも多様性をあまりに価値のあるものとして信奉してきた米国社会はそれが元で分断されてきたのであって、再び連携することでオレが責任をもって、米国をまとめ上げ地上最強の国にしてみせるという事です。
これも米国が抱える闇の部分をいとも解りやすく浮かび上がらせ、違うことに着目ばかりするのではなくて、共通性に着目することによって米国民同士連携をしてゆこうというシンプルなメッセージであります。

トラ大統領の政敵は、ヒラリーでも民主党でもなく実は国内のメディアだったのです。選挙キャンペーン期間中からやれ「トラ候補の支持者はろくでもない人たちだ」とか女性差別主義者だとか人種差別主義者だとか挙げ句の果てにはトラ候補に二十数年前??セクハラを受けたなどというあたかも韓国の売春婦のような女性を登場させてみっともなくも足を引っ張ったのが大手メディアでした。
トラ大統領も大手メディアがPCそのものであり、一部のエリートによって世論誘導されアメリカ社会を間違った方向に持ってゆこうとしている事を見抜いているからこそ、大手メディアをfake newsと断罪し、信用せず相手にせず自身のTwirretをうまく活用して極力バイアスカーブが掛からないようにして情報発信をしているわけです。

そのトラ大統領の泣き所は、支持率の低さと心の友が少ない事でしょう。多分夜中に「ドル高がいいのか、ドル安がいいのかわからん!」とか「台湾ってどこの国?」とか思って悶々とされているのかも知れません。

G7の中で抜群の安定性と驚異的な支持率をもった日本の安倍首相が、礼儀正しく一番に飛んできて友情の手を差し伸べてくれたことが本当に嬉しかったに違いありません。しかも人の足を引っ張るメディアを手玉に取り、政策運営においてはあたかもコンビニのように右から左まですべての品揃えを用意して、中途半端な野党を無用のものとし、長年先進国病といわれるデフレに苦しんだ経済を建てなおして潜在成長力3%という理想的な方向性を目指している日本の安倍首相に教えを乞うことも多いのではないでしょうか。


ぜひ東アジアの安定が日米共通の国益であって、その平和と繁栄を両国手をたずさえて進めてゆき互いに得意分野での相互協力を図りながら自由で公正な貿易によって世界の見本となるような同盟関係を発展させてゆきたいものです。

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